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Column

海外の寿司屋事情、ジョグジャカルタの場合

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旅仲間のひとりに、寿司好きがいる。彼は「世界の寿司屋から」をテーマとし、日本とは違った食材を出してくる諸外国の寿司屋を巡ってきた。
「今までで一番ひどかったのは、トロントの寿司屋だったなぁ」
などなど、寿司屋比較論を聞くのは楽しいものだ。
とはいえ一緒に旅行しても、寿司屋へ向かう彼の一派と、酒がメインの店へ向かう私グループはいつも別行動。それが、インドネシアのジョグジャカルタでは
「たまには揃って寿司屋へ」
との話にまとまった。
なにしろイスラム全盛の国家は酒を飲ませる店が極端に少なく、酒組が寿司組に自然吸収されただけ、とも言えるが。

ジャカルタには日本人の板前が握る真っ当な寿司屋があるのに比べ、ジョグジャカルタの寿司屋は期待できない、というのが旅行前にネットで調べた情報。それでも、「建物がしっかりしてるから、わりと大丈夫じゃない?」とアタリをつけた寿司屋「SUSHI TEI」へ行ってみることにした。



アジア数か国に展開しているチェーン店らしく、「1994年の創業以来、本物の日本料理を提供」「真の日本スタイル」などの説明文が。



硬派な店と思わせておいて、入口横にはかわいいレイアウトの一角もあり。



カウンターは回転寿司方式だが、さほど皿が流れている様子はない。
水槽のなかでは、伊勢海老がガサゴソ。
こちらが日本人と分かったのか、メニューを持ってきたスタッフが「伊勢海老のボイルや天ぷら、いかがですか」と営業トークを開始した。だが、せっかく新鮮な素材なのに刺身をすすめないとは、これいかに?
メニューを開いて、店の方向性が判明した。



「本物の日本料理」はどうした、とツッコミを入れたくなるほど、派手でカラフルな料理写真が並ぶ。ああ、寿司ではなくて、SUSHIなのね。
腹をくくり、日本ではまずお目にかからない皿をいくつかオーダーしていった。
ちなみに、酒はビール一択。日本酒も焼酎もサワーもワインもない。



手前は、中華イイダコの軍艦巻。甘辛いタレにつけこんだイイダコがどっさりで、ビールのつまみには最適だ。
奥は、ブラックキャビアの軍艦巻。実際はキャビアでなく、黒いトビコだった。
お値段はどちらも、1皿約220円。



店名を冠した「すし亭ロール」(約680円)。鮭の天ぷらと、えのき茸が巻かれている。
そして、天ぷらなので、天つゆが用意される。寿司飯を天つゆにつける異次元ゾーンに突入だ。もちろん結果は「天つゆにつけないほうがおいしい」。



左はチーズがこれでもかと振りかけられた、サーモンチーズ巻。
右はアボカドと海老の押しずし。“マヨネーズの波間に、アボカドを背負った海老の押しずしが泳ぐ”の図。
チーズやらマヨネーズやら、乳製品をどうしても寿司と仲良くさせたいらしい。



いなりソフトシェルクラブ。
後ろの緑色のトッピングもトビコだ。いったい、この国のトビコは何色揃っているのだろう。



最後に、普通のメニューも。炙りシマアジの握りと、シメに味噌汁。
諸外国の寿司屋を巡ってきた同行の彼は、どの店でもマグロの握りを必ず頼んでいたのに、「SUSHI TEI」にはマグロがなくてガッカリ。炙りシマアジなんて通なメニューがあるにも関わらず、定番のマグロがないのは珍しい、とか。

シマアジは、ごくごく普通においしい。揚げ物もチーズも入っていない寿司の存在に、ようやくホッとする。
だが、味噌汁を飲んだ皆の感想は、「ホテルの朝食ビュッフェで並んでいたMISO SOUPのほうがいい」。もしかして出汁をとり忘れちゃったかな、と板長を優しく諭したくなるお味だった。



お会計をお願いすると、最後に飴とクーポンが配られた。
やけに日本的なサービスではあるが、クーポンは……使う予定、ないな。




今回の寿司屋訪問で、海外の寿司屋を巡り続けている旅仲間の行動力に、少し感動した。
そして逆に、今までで一番ひどかったと彼が訴えるトロントの寿司屋にも行きたくなってきた。寿司を食べてみたい、というより、寿司で私を驚かせてほしい、という別の好奇心で。

文・山本ジョー