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楽園葡萄酒醸造場の多芸なオジサマ

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ワイナリー紹介をするのに、ワインの中身には一切触れないのが申し訳ないのだが、まずはエラ・フィッツジェラルドの話から。

ひょんなことから、山梨県の楽園葡萄酒醸造場へ突然立ち寄ることになった。夜も更けた時分、誰もいなかった試飲ルームの奥から出てきたのは、ほろ酔いのオジサマ。茹でたての枝豆と自社ワインを両手にご機嫌な様子の一瀬明徳さん、楽園葡萄酒醸造場の代表だ。

おくつろぎのところ申し訳ない……と挨拶したところで、どうしても視野に入りこんでくる特大スピーカー2基に触れざるを得ない。なんでワイナリーにスピーカーが?
「これ、ユーミンのコンサートで実際に使用してたもの」。
中にオトナが5人は楽々入りそうなスピーカーについて、嬉々として説明してくださる。
「でも音楽は、ぜんぜん詳しくないの〜。詳しくないんだけどね〜」
などと謙遜しながら、一瀬さんはさっそくレコードをかけてくれた。
エラ・フィッツジェラルドの「Take Love Easy」。



……どう考えても玄人のチョイスだけれども。

値段を尋ねるのもためらわれるピッカピカの真空管アンプを横目に、さて、恐る恐るワインを買いたい旨を伝えると、「じゃあ、ラベル作ってあげる」とおっしゃる。
このワイナリー、オリジナルラベル製作をネットでも受注していて、しかもデザイン料は無料なのだ。

ならば、とその日に撮影した友人の画像をあしらってもらおうと思い立ち、デジカメからSDカードを取り出して一瀬さんへお渡しした。
ご機嫌な表情のまま、ゆったりと事務所のPC前へ移動する一瀬さん。そうしてPCへSDカードを差し込んだ直後、一瀬さんは瞬時に変貌を遂げた。
スナップ画像を取り込み、トリミングしてリサイズ、色調補正、レイアウト決定、その上に重ねる文字を入力し、全体のイメージに合うフォントとサイズ選択、配置。
……って、一連の作業が異様に素早い。なんなんだ、何者なんだ、この人は。



しかも、使っている画像処理ソフトはフォトショップあたりかと背後から覗いてみたら、えっ、パワーポイント?それ、プレゼン資料作るソフト……。
そうしてBGMにJAZZが流れる中、ものの数分でクオリティの高いオリジナル・ラベルがプリントアウトされ、ボトルに貼られたのだった。
飾り気のない素朴な人柄とルックスながら、音楽の達人にしてデザイナー。カッコイイねぇ、一瀬さん! 絶対また会いにこようと思わせるほど、趣深い人物だった。



で、ワインの味について書けないのは、私がまだ楽園葡萄酒醸造場のワインを1口も飲んでないから。一瀬さん、すみません……オリジナル・ラベルのボトルって、かえって開けるタイミングがむずかしいもんで……。


楽園葡萄酒醸造場
http://www.wine1940.com/


文・山本ジョー