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Column

染まるなら 染めてしまおう 赤ワイン

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ワインを飲む日は基本、ダークな色合いの服を選ぶ。
白いシャツなど着ようものなら、翌日には胸元や袖口にどす黒い斑点を発見し、
「また赤ワインこぼしてたか……」

とガックリくる。だもんで、黒いシャツやニットが我が家のタンスを着々と侵略中。ファッション・センス云々の話ではないので、コムサがどうしたとかいわれても困る。ただ、黒いだけ。もっぱら、ユニクロのワゴンセールだ。

もちろん、うっかり付けてしまった赤ワインの汚れを落とすには、
「シェービングクリームを使う」
「白ワインを滲みこませた布で叩いて色を移しとる」
などの手法がある。しかし、放置したまま時間が経つと、なかなか手ごわい。汚れに気付くのは大概、酔いが覚めた翌日だというのに。


なら、先に染めちゃえばいいじゃん。

無垢の木のテーブルを購入した人が、あえて赤ワインや濃厚なコーヒーを塗りたくった話を思い出した。生活していく上で必ず付くであろう汚れを目立たせないため、新品にも関わらず、先に汚れの原因を均一に塗ってしまうという豪胆な手段。
その発想、いただこうでないの。
ちょうど、料理にでも使おうと、飲み残しやらの赤ワインをせっせと溜めこんでいたところだった。ブレンド比率は、日本50%、フランス30%、中国20%。色は薄めだがカベルネ主体だ。たまたま状態が悪く飲むのをあきらめた日本ワインがあり、こんな哀しい比率になっていた。

ワインを琺瑯の容器に移し、少々ヨレッときていたシャツ、さらし、毛糸を漬けこむ。
定着液として、ミョウバンをお湯で溶かしたものを用意。
1日ワインに漬けこんだら、ミョウバン液に浸し、水洗い。
そしてまた1日ワインに漬け、ミョウバン液に浸し、水洗い。
結果が、コレだ。





手ぬぐいサイズにカットしたさらしは、絞り染め風に。
……い、色が薄い……しかも鮮やかな赤ワイン色ではない。
ああ、そうか、シャツにこぼしたときにはグレーの斑点になるワインなのだから、染まるとすればグレーなのだな。





シャツも、絞り染めにしてみた。
これならギリギリ外へ来ていけるかと思いきや……







ワインの澱の部分がこびりついていたらしく、1カ所がとくにどす黒い。
室内着に決定。

では、毛糸はどんなもんか?







鮮やかな色をした右側の毛糸は、残念、ワインではなくヨウシュヤマゴボウ染めである。
いちばん左が染める前、真ん中がワイン染め。グレーというより、なぜかアイボリー感が増した。
そして、右がヨウシュヤマゴボウの液にそのまま漬けた生染めで、奥はヨウシュヤマゴボウの液に浸しながら火にかけた加熱染め。加熱するとオレンジ色に変わる。こちらのほうが、よっぽどワイン色らしい。






ヨウシュヤマゴボウというのは、よく雑草として生えている、あのブドウっぽいヤツ。ヨウシュヤマ「ブドウ」ではなく、ヨウシュヤマ「ゴボウ」であることを初めて知ったが、根っこがゴボウのような形状だから、なのだそうな。
しかし、根も種も毒だ。ブドウ扱いもゴボウ扱いもしてはいけない。





木綿のさらしでは、ヨウシュヤマゴボウでも鮮やかにはいかなかった。
左から順に、染める前、ワイン染め、ヨウシュヤマゴボウ染め、ミョウバン液たっぷりのヨウシュヤマゴボウ染め。全部グレーである。

とまあ、素人があーでもないこーでもないと騒ぎながら染めてみたわけだが、実際は定着液の種類によって色が変わる。また、木綿は染まりが悪いので、色素沈着しやすいよう豆乳に浸してタンパク質を染み込ませる下処理が必要、らしい。





結局、発見したのは「ワイン色は、ワインでは出せない」という事実だった。
ワインをこぼしても大丈夫なワイン染めのシャツは、グレーである。……って、黒系統である私のワードローブと大差ない。釈然としないまま、初のワイン染め体験は終了した。


文・山本ジョー