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ワイン生産者の顔をもつ映画監督が描く、「世界一美しいボルドーの秘密」撮影裏話(後編)

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 ボルドーワインをめぐる生産者=シャトーと、買い手=中国人とのしたたかなせめぎ合いを見つめる本作。困難極めるボルドーシャトーの生産者たちとの出演交渉のよそで、中国側での撮影もなかなか手強かったようだ。監督の話の続きを聞いてみよう。

 登場する何人かの中国のボルドーコレクターもかなりユニークな人物ばかり。出演交渉は人のツテをたどって、たどって、行きつくというケースが多かった、こちらも困難を極めたそうだ。
 映画では、ボルドーワインが中国人の恰好の投資の対象になっている様子が赤裸々に描かれる。オークションで勝つことだけに闘志を燃やし、せり落としたあと、「私はワイン自体にはあまり興味がないの」とあっさりと言ってのける中国人マダムは確かに強烈な印象を残している(原題の『Red Obsession(=赤い執着)』はこの女性からヒントを得てつけたそうだ!)。




 ワーウィック・ロス監督の来日イベントでは、投資目的のワインコレクターについても質問が飛んだ。
「ボルドーワインが投資対象になるのは避けられないこと。高級品、高品質で価値のあるものがあれば投資したくなるのが、投資家です。しかし、昨今のボルドーワインの価値は上がりすぎてしまいました……。ただし、私自身はワインの目的は、なんといっても〝飲まれること〟にあると信じています。ワインは、ある土地のタイムカプセルのようなもの。その土地、その年の気候、土が封じ込まれています。中国の投資家の中には、ワインを買い占めたあと、その箱をそのまま放置して、傍らにおいておくだけで飲もうともしない人もいる。そうなってしまったら、ワインは魂を失ってしまいます」と心情を語ってくれた。





 監督はワインをこよなく愛している。
 それは、イベント当日彼が持参した1本のワインからも伝わってきた。
「ピノ・ノワール2011ポートシー・エステート」。じつは彼、オーストラリアにワイナリーをもつヴィニュロンでもある。今回は自らのワインを手持ちで来日してくれたのだ!



「もともと私は、フィルムスクールで映画の勉強をして、映画界に入りました。映画の仕事を続けていたのですが、両親が所有していた土地がオーストラリアのモーニングトン半島の先端にあり、そこがピノ・ノワールに最適な石灰岩が隆起している土地だとわかったのです。そして、2000年に牧場だった土地の一部にピノ・ノワールとシャルドネを植え始めました」とロス。

 彼の所有するワイナリーの場所も知らずに、
「ボルドーの映画を撮ったのに、なぜピノ・ノワールのワインなの?」
などという失礼な質問をしてしまったのだが、あとで、激しく後悔した。ひと口飲めば、ワイナリーの名前にもなっている産地「ポートシー」がピノ・ノワールに適した土地だとはすぐにわかる。冷涼感を漂うクールピノで、アタックはやさしく、上品な赤系の果実味がアピールしてきて、タンニンもとてもキメ細やか。テクスチャーは緻密で余韻も静かで長い。彼が土地に敬意を払うことを大切にしていることもちゃんとワインから伝わってくる。まだ日本未入荷というのが、じつに残念だ。

 そんなロス監督のドキュメンタリー映画、ワイン好きならぜひ、劇場に足を運んで見てほしい。スクリーンで見るさまざまなシーンは、いろいろな意味で圧巻だ!



映画「世界一美しいボルドーの秘密」
東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・テアトル梅田ほかにて全国公開中。
※映画観賞後の半券で、ワインショップ・エノテカ 銀座店、大丸 東京店・梅田店にてキャンペーンも実施中! 詳細は公式HPをご覧ください。
http://www.winenohimitsu.com/

取材・文/鹿取みゆき