ワイン業界で働きたい方のための求人情報

Column

「私はコレでワイナリーを辞めました」? 答えは発明

SHARE ON

「大好きなワインを自分で造れるなんてスバラシイ! 私もワイナリーで働きたい!」
と願う人の声はよく聞くが、実際にワイナリーで働いたもののワケあって辞めた人と出会う機会はそうそうない。

さて、家業のワイナリーを継ぐかと思いきやスッパリ辞めてしまった男がココにいる。



アントニオ・ピエリボーニ。
ヴェネト州で代々ワインを造り続けてきた家に生まれ、父親に期待をかけられて育ったピエリボーニ氏は、しかし10代のころから「将来は発明家になりたい」との明確なヴィジョンがあった。
父親からすれば
「うちは昔っから堅実なワイン・メーカー。ワイン造りこそ安定した職業。発明家だなんて浮かれたこと言ってないで、とっとと目を覚ませ」
と苦々しく思っていたことだろう。
子供のころは、誰もが宇宙飛行士や野球選手になりたいと夢を語った。発明家も、同じ“子供の夢”レベルだと大人に軽く一蹴されておかしくはない。

だが、ピエリボーニ氏はあきらめなかった。
父親が反対している以上、発明に関する勉強はおおっぴらに許されない。子供の頃から家業は手伝っていたので、その合間を縫い、機械工学専攻の大学生が読む程度の本を自分で読み解きひたすら独学。
おかげで、家業のワイナリーには醸造用のマシンを次々と導入し、オートメーション化をすんなり進めていった。
そうしてワイナリーでの労力がぐんと軽減したところで、彼は本題に。
「お父さん、僕やっぱり発明家になるから、ワイン造りは辞めるね」
「なにぃーーー?」
父親、クールポコ状態で激怒、
「男は黙ってワイン造り!男は黙ってワイン造り!」。
それでもピエリボーニ氏の覚悟が変わらないと知った父親は、「金の援助も一切しない!それでもいいなら辞めろ!」と宣言。

「でも、実は・・・」
とピエリボーニ氏はコッソリ打ち明ける。
「お母さんは応援モードだったんだよね。発明家として独立したての頃、金銭面でも少し融通してくれた」
母親は、家業を継ぐレールに乗せられ続けてきた我が子がちょっぴり不憫だったのかもしれない。
また、すでに家を離れていた彼の兄弟も協力的だった。発明開発の資金援助をする投資家をアメリカで紹介してくれたりもした。

スパークリングワインの高速打栓機を開発し、製品化されたものがフランスで販売されてからは、金銭面での心配も少なくなったという。



その後、画期的なワインエアレーター「ポネンテ」の開発に成功したのは、ワイナート本誌をご覧の方々ならご存じのはず。「ポネンテ」は2014年冬号(No.73)の付録だから、その使い勝手もすでに体感されたのでは。



ワイン造りからは遠のいてしまったけれど、ワイングッズを開発し続けるピエリボーニ氏。ワインを愛する心を両親からちゃんと受け継いでいるのは喜ばしい。
ただし、ワイン関連以外にも発明品は多々。「あるときはハイヒール、あるときはぺったんこ靴になるよう、ヒールが折りたためる女性靴を開発した」のだそうだ。
なにやら、ドクター中松的な香りも漂ってくる男である。

文・山本ジョー